ANYCOLORとカバー、四半期決算は減益なのになぜ株価が上がった?

資産形成

結論:ANYCOLOR(5032)・カバー(5253)とも、2026年夏に発表した最新の四半期決算は前年同期比で減益でした。それでもANYCOLORの株価は発表後に4.5ヶ月ぶりの高値を記録し、カバーは証券会社が目標株価を引き上げました。「減益=ネガティブ」と単純に読めない典型例です。両社の決算の中身と、市場が前向きに反応した理由を整理します。

この記事はVTuber企業3社の決算を比較するの続報です。ANYCOLOR(前回決算記事)・カバー(前回決算記事)とも、新しい会計年度に入って最初の四半期(1Q)決算です。Webエンジニアとして働きFP3級を持つ筆者の視点で、公開情報を整理するもので、特定の投資判断を勧めるものではありません。

2社の1Q決算の数字比較

項目ANYCOLOR
2027年4月期1Q
(2026年5〜7月)
カバー
2027年3月期1Q
(2026年4〜6月)
売上高166.2億円(+5.4%)88.25億円(▲8.3%)
営業利益63.9億円(▲8.8%)6.51億円(▲33.0%)
経常利益63.84億円(▲8.8%)5.98億円(▲35.8%)
四半期純利益43.65億円(▲10.6%)4.15億円(▲40.1%)
※各社決算短信・各種報道をもとに整理。数値は執筆時点のもの。前年同期比。

見出しの数字だけ見ると、両社とも「減収減益」に近い厳しい決算に見えます。ANYCOLORは増収は確保したものの営業利益は約1割減、カバーは売上・利益とも二桁減という内容です。ところが、この決算発表を受けた市場の反応は対照的に前向きでした。

ANYCOLOR:YoYは減益でも、QoQ改善と自社株買いが好感された

ANYCOLORは決算発表と同じ2026年9月9日、最大70億円(280万株・発行済株式総数の4.67%)を上限とする自社株買いを発表しました。取得期間は2026年9月10日〜2027年4月30日です。

翌9月10日、ANYCOLORの株価は4日ぶりに大幅反発し、4.5ヶ月ぶりの高値を記録しました。前年同期比では減益なのに株価が上がった理由は、報道によれば「1Q決算のQonQ(前四半期比)での利益回復」と「自社株買いの発表」が評価材料になったためとされています。つまり投資家が見ていたのは「1年前と比べてどうか」ではなく、「直前の四半期からどう改善したか」という短期的なトレンドと、株主還元姿勢の2点だったということです。

これは前回のANYCOLOR決算記事で扱った「今期は過去最高益・増配でも、来期の減速見通しで売られた」という話と表裏の関係にあります。ANYCOLORの株価は一貫して「今の数字」より「この先の数字」で動いている、という点は変わっていません。

カバー:減益の中身はほぼ一過性、証券会社は強気に

カバーの減益要因は、決算資料によると次の3点です。

  • タレント構成の変化
  • トレーディングカードゲームの販売スケジュールが前年と異なったこと
  • EC商品の製造・販売オペレーション移行に伴う、一時的な品揃え不足

一方で、ライブ・イベント分野は前年同期比+109.6%と大きく伸びています。配信・物販の落ち込みが目立つ決算ですが、要因の多くはスケジュールのズレや移行期の一時的なものと説明されており、事業構造そのものが悪化したわけではなさそうです。

この決算を受け、東海東京証券は目標株価を2,270円から2,440円に引き上げ、投資判断「アウトパフォーム」を維持しました。減益決算の直後に目標株価が引き上げられるのは一見意外ですが、「減益の中身が一過性かどうか」を見た結果と考えられます。これは前回のカバー決算記事で見た「営業利益減の主因はホロアース関連の一時的な特別損失」という構図とも一致しています。

2社に共通する教訓

  • YoY(前年同期比)だけが判断材料ではない:ANYCOLORはQoQ(前四半期比)の改善、カバーは要因の一過性が評価されている。「減益」という見出しの言葉だけで判断すると、市場の実際の反応とズレる
  • 株主還元・アナリスト評価は先行指標になりうる:自社株買いや目標株価の引き上げは、会社・証券会社が「今の数字より先を評価している」ことの表れ
  • 決算の「中身」を見る癖が引き続き重要:invest_49で整理した通り、この2社は決算のたびに見出しと実態にギャップが生まれやすい

まとめ

  • ANYCOLOR・カバーとも2026年夏の1Q決算は前年同期比で減益
  • それでもANYCOLORは自社株買い発表とQoQ改善で株価が4.5ヶ月ぶりの高値に、カバーは減益要因の一過性が評価され目標株価が引き上げられた
  • 「決算が悪い=株が売られる」と単純に結びつけず、比較軸(YoYかQoQか)や要因の性質(一過性か構造的か)を確認する必要がある

免責事項

本記事は公開情報をもとにした情報提供・会計知識の解説を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資行動を推奨するものではありません。数値は各社の決算短信・各種報道をもとにした概算で、執筆時点のものです。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行ってください。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。

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