グリーホールディングス(3632)の決算を読む|減収減益なのに増配、そして「ぶいすぽ」筆頭株主で何が変わったか

結論:「ぶいすぽっ!」を運営するBrave groupの筆頭株主であるグリーホールディングス(証券コード3632)の2026年6月期は、売上高513億円(前期比▲10.1%)・営業利益40億円(▲17.2%)と減収減益でした。それでも経常利益は49億円(+31.3%)、当期純利益は41億円(+242.3%)と大幅増益になり、配当も1株22円へ増配しています。伸びた理由は本業ではなく為替差益で、Brave group(ぶいすぽ)の業績がこの決算にどこまで反映されているかは、実はほとんど見えません。

これまでカバー(5253)ANYCOLOR(5032)の決算を読んできました。3社目のグリーホールディングスは、この2社とは立ち位置が違います。VTuber事業の運営会社そのものではなく、非上場の「ぶいすぽっ!」運営元Brave groupに出資し、2026年4月に筆頭株主になった会社です。「ぶいすぽに投資したかったけど…」という記事を書いたときから受けている「グリー株を買えば実質ぶいすぽに投資したことになるのでは」という疑問に、今回の決算数字を使って答えを出します。Webエンジニアとして働きFP3級を持つ筆者の視点で、公開情報を整理するもので、特定の投資判断を勧めるものではありません。

グリーホールディングスはどんな会社か

グリーホールディングスは、かつてソーシャルゲーム大手として知られた「グリー」が母体の持株会社です。ゲーム事業に加え、スマートフォン向けメタバース「REALITY」を軸にした事業を展開しており、2026年6月期からこの事業区分を「メタバース事業」から「ライブエンターテインメント事業」に名称変更しました。REALITY発のバーチャルライバーやVTuberプロダクションの運営が含まれる、グリー自身のVTuber関連事業です。

この「グリー自身のVTuber事業」と、2026年4月に出資して筆頭株主になった「Brave group(ぶいすぽっ!)」は、別の会社・別の事業です。この違いが、後半の「グリー株=ぶいすぽ株か」を考えるうえでの一番のポイントになります。

2026年6月期の数字

項目2025年6月期2026年6月期2027年6月期(会社予想)
売上高約571億円513億円(▲10.1%)510億円(▲0.6%)
営業利益約48億円40億円(▲17.2%)39億円(▲3.1%)
経常利益約37億円49億円(+31.3%)
当期純利益約12億円41億円(+242.3%)
1株あたり配当14.5円22円(+7.5円)22円(中間11円・期末11円)
※各種報道・決算資料をもとに整理。数値は概算・執筆時点。前期実績は逆算による概算値を含む。

ひと目でわかる違和感があります。本業の儲けを示す営業利益は減っているのに、経常利益・純利益は大幅に増え、配当まで増やしている。この「ねじれ」の正体を見ていきます。

増益・増配の中身:本業ではなく為替差益

営業利益から経常利益にかけて9億円ほど上乗せされ、さらに純利益が41億円まで積み上がっている理由として説明されているのは、為替差益の拡大です。円安が進んだ局面で、外貨建ての資産・投資などから為替差益が発生し、これが経常利益・純利益を押し上げました。加えて、社債の償還を進めたことで財務体質が強化され、自己資本比率は75.8%まで上昇しています。

グリーHDの決算、3段階で見ると中身が変わる
営業利益 40億円(▲17.2%)← 本業はむしろ苦戦
+ 為替差益の拡大
= 経常利益 49億円(+31.3%)
= 当期純利益 41億円(+242.3%)← ここだけ見ると絶好調に見える

ANYCOLORの記事で「株価は今期の実績より来期の見通しで動く」という話をしましたが、ここでの教訓は別のものです。「純利益が2.4倍」という見出しだけを見ると好決算に思えますが、その中身が本業の実力(営業利益)なのか、為替や資産売却のような一時的な要因なのかで、評価はまったく変わります。今回のグリーHDは後者にあたり、来期(2027年6月期)の会社予想も営業利益ベースでは横ばい〜微減(39億円、▲3.1%)にとどまっています。

好調なのは「グリー自身のVTuber事業」

全社の営業利益は減った一方で、事業別に見ると明暗があります。ゲーム・ライブエンターテインメント・IP・DXの4事業(投資事業を除く)だけを合計すると、売上487億円・営業利益47億円。全社の営業利益(40億円)より多く、投資事業セグメント単体は差し引きするとほぼ収支トントン〜小幅な赤字だったことが読み取れます。

その4事業の中で最も好調だったのが、名称変更したライブエンターテインメント事業(旧メタバース事業)です。通期売上92億円・営業利益15億円と、前期比で増収増益。中核のREALITYは四半期営業利益が過去最高を更新するなど、グリー自身が運営するVTuber・バーチャルライバー関連の事業は好調でした。

ここで重要なのは、この「ライブエンターテインメント事業」の好調さと、Brave group(ぶいすぽっ!)への出資は別の話だという点です。前者はグリー自身が運営する事業、後者は2026年4月に子会社REALITY経由で出資した別会社です。

本題:グリー株=ぶいすぽ株になるのか

2026年4月、グリーの100%子会社REALITYがBrave groupのシリーズE(総額80億円超)に参加し、Brave groupの筆頭株主になりました。ここまでは公式発表の通りです。ここから先、投資家として気になるのは「これでグリー株を買えば、間接的にぶいすぽの成長を取り込めるのか」という点です。

  • 出資比率は非公表。「筆頭株主」というだけでは、グリーがBrave groupの何%を保有しているかは分からない
  • Brave groupは非上場・決算期も異なる(9月期)ため、グリーHD(6月期)の今回の決算に、Brave groupの業績がどう反映されているかを外部から特定するのは難しい。少なくとも、好調だった「ライブエンターテインメント事業」(グリー自社運営、92億円・15億円)のセグメント数値の中に、Brave groupの業績がそのまま合算されているわけではないと考えられる
  • グリー全体の売上(513億円)に対し、投資事業セグメントの規模は極めて小さい(差し引き計算で売上26億円程度、営業利益はほぼゼロ〜小幅赤字)。Brave group株式の評価損益等がここに含まれるとしても、全社業績への影響は限定的とみられる
グリー株を買うと、何に投資したことになるか(整理)
① グリー自身のゲーム事業
② グリー自身のライブエンターテインメント事業(REALITY・自社VTuber、好調
③ IP事業・DX事業
④ 投資事業(Brave group株式を含むとみられるが、規模は小さく比率も非公表)
→ ①〜③が業績の大半を占め、Brave group(ぶいすぽ)への実質的なエクスポージャーは④の中の一部にとどまる

今回の決算数字を見るかぎり、「グリー株を買う」ことは「ぶいすぽ株を買う」こととイコールにはなりません。近いのはむしろ「グリー自身のVTuber事業(好調)に投資しつつ、おまけでBrave groupへの小さな間接エクスポージャーもついてくる」という位置づけです。この整理は、Brave groupの資金調達の経緯や出資者ごとの狙いを詳しく追った有料noteの結論とも一致します。より詳しく知りたい方は後述のリンクからどうぞ。

まとめ

  • グリーHDの2026年6月期は売上▲10.1%・営業利益▲17.2%の減収減益。それでも経常利益+31.3%・純利益+242.3%と大幅増益し、増配(14.5円→22円)
  • 増益・増配の中身は本業ではなく為替差益。本業(営業利益)は苦戦しており、来期予想も横ばい〜微減
  • 事業別では、グリー自身が運営する「ライブエンターテインメント事業(旧メタバース、VTuber関連)」が増収増益で好調
  • Brave group(ぶいすぽ)への出資は投資事業セグメントの一部とみられ、規模・比率とも限定的。「グリー株=ぶいすぽ株」ではない

「筆頭株主になった」というニュースだけを見ると、グリーとBrave groupが一体であるかのように感じますが、決算書の中身を追うと、両者はまだ別々の存在として動いていることが分かります。見出しのニュースと決算数字、両方を確認する習慣が、この手の「間接投資」を検討するときには特に大事になります。

もっと深く知りたい方へ(有料note)

Brave groupの資金調達をシリーズA〜Eまで時系列で追い、各出資者の狙い・グリー筆頭株主化の意味・IPOシナリオ・個人が関われる手段までさらに深掘りした有料noteを公開しています。
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▶ ANYCOLOR(にじさんじ)とカバー(ホロライブ)、投資対象として今どちらを見るか(note・200円)

免責事項

本記事は公開情報をもとにした情報提供・会計知識の解説を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資行動を推奨するものではありません。数値は各種報道・決算資料をもとにした概算で、執筆時点のものです。出資比率など公表されていない情報については推測を避け、公開情報から読み取れる範囲に留めています。株価や業績の今後の見通しについて予測するものではありません。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行ってください。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。

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参考ソース

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