投資家にとって常に意識すべきテーマのひとつが「金利と株価の関係」です。
ニュースで「アメリカのFRBが利上げ」「日銀がマイナス金利解除」などと聞いた直後に、株価が大きく動いた経験は多くの人があるでしょう。
一見すると抽象的なテーマですが、金利は企業の利益や投資家の資金配分に直接影響し、株式市場全体の方向性を決める大きな要因となります。
この記事では、金利と株価の基本的な関係に加えて、実際の事例や銀行株への影響も交えて詳しく解説していきます。
金利とは?投資家が気にする理由
金利とは「お金を借りるためのコスト」です。銀行預金に対する利息、住宅ローンや企業の借入金利など、私たちの生活にも密接に関わっています。
中央銀行が政策金利を引き上げたり下げたりすることで、市場全体の金利水準は大きく変化します。その結果、企業の投資活動や消費者の行動に影響を与え、ひいては株価にも波及するのです。
金利と株価の基本的な関係
一般的に「金利が上がると株価は下がりやすく、金利が下がると株価は上がりやすい」と言われます。
その理由は大きく3つあります。
- 企業の資金調達コストが増える
金利上昇で借入コストが高まり、企業が設備投資や事業拡大を抑える傾向になります。利益成長が鈍化するため株価は下落しやすくなります。 - 債券の利回りが上昇し、株から資金が流出する
金利が上がれば国債など安全資産の利回りが高まり、リスクを取らなくても安定した収益が得られるようになります。その結果、株式市場から債券市場に資金が移り、株価が売られる要因になります。 - 将来利益の割引現在価値が下がる
株価は将来の利益を現在の価値に割り引いて評価します。この割引率に金利が用いられるため、金利上昇は理論株価を押し下げる効果を持ちます。
実際の事例①:FRBの利上げとNASDAQの下落
代表的な事例として、2022年から続いた米国FRB(連邦準備制度理事会)の利上げがあります。
急激なインフレを抑えるため、FRBは政策金利をゼロ近辺から一気に5%超まで引き上げました。
その結果、特にグロース株(成長株)中心のNASDAQ総合指数は大きく下落しました。
成長企業は将来の利益を見込んで株価が高く評価されますが、金利が上がるとその「将来利益の割引現在価値」が急激に低下するため、株価が大きく調整したのです。
一方で、S&P500全体も下落しましたが、グロース株の比率が低いダウ平均の方が相対的に下落幅は小さく、金利感応度の違いが明確に現れました。
実際の事例②:日本のマイナス金利解除と銀行株の上昇
日本でも2024年、日銀が長らく続けてきたマイナス金利政策を解除しました。
このとき、株式市場では銀行株が一斉に上昇しました。
理由はシンプルです。銀行は預金者から低い金利でお金を集め、それを貸し出して利ざやを得ます。政策金利が上がれば貸出金利も上昇するため、銀行の収益が改善するのです。
実際に三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループなど大手銀行株は発表直後に急騰し、投資家の注目を集めました。
つまり「金利上昇=株価下落」と単純に考えるのではなく、セクター(業種)ごとの影響の違いを理解することが投資戦略に直結します。
金利が下がる局面では?
逆に金利が下がると、以下のような効果で株価は上昇しやすくなります。
- 企業が安く資金調達できるため投資が活発化
- 債券利回りが下がり、投資家がより高いリターンを求めて株式市場へ資金を移す
- 割引率が低下し、将来利益の現在価値が大きくなる
リーマンショック後やコロナショック直後のように、景気が悪化すると中央銀行は積極的に利下げを行い、株式市場が資金流入で回復するケースが典型例です。
投資家が注目すべき金利指標
株式投資を行う際にチェックしておきたい金利の指標は以下の通りです。
- 政策金利(日本では日銀短期金利、米国ではFF金利):金融政策の方向性を示す最重要指標
- 長期国債利回り(10年国債利回り):市場が予想する将来の景気やインフレを反映
- 米国10年債利回り:世界の投資マネーの流れを左右し、日本株にも大きく影響
特に米国金利は世界の資金配分の基準となるため、日本株投資家も常に意識すべきポイントです。
まとめ|金利を理解して投資判断を高める
- 金利が上がると株価は下がりやすいが、銀行株など一部業種は上昇することもある
- 金利が下がると株価は上がりやすく、市場に資金が流入しやすい
- 実際の事例(FRBの利上げとNASDAQの下落、日銀のマイナス金利解除と銀行株の上昇)を見ても、金利が株式市場に与える影響は非常に大きい
- 投資家は「政策金利」「長期金利」「米国金利」の3つを常に意識することが重要
投資の世界では「金利を制する者が相場を制する」と言われるほど、金利は株価と切っても切り離せない存在です。
ニュースで「金利が動いた」と聞いたときは、その背後にある経済状況や各セクターへの影響を考え、自分の投資戦略に落とし込んでみてください。


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