2023年の上場以降、「ホロライブ」を擁するカバー株式会社(5253)は、VTuber業界の中心的存在として注目を集めてきました。
しかし、2025年現在、株価は上場時の勢いを失い、低迷が続いています。
一時は「日本発の次世代エンタメ企業」として脚光を浴びたカバーが、なぜいま苦戦しているのでしょうか。
そして、再び株価を押し上げるために必要なものは何か。
この記事では、株価低迷の主な原因と、今後の再建シナリオについて詳しく解説します。
■ カバーの株価が低迷している主な理由
カバーの株価低迷には、いくつかの要因が重なっています。
どれかひとつの要素というより、複数のリスクが同時に顕在化した結果だと見るべきでしょう。
1. 人気タレントの卒業・離脱
ホロライブを支えてきた人気VTuberの卒業や活動終了が相次いだことは、株価への最も直接的な打撃となりました。
「がうる・ぐら」など、海外ファンを中心に絶大な人気を誇ったタレントの離脱報道は、投資家心理を冷やすには十分でした。
VTuber事業はタレント個人の人気が企業の収益に直結します。
タレントが活動を終えると、グッズ・配信・イベントなど複数の収益源が同時に縮小するため、投資家にとっては「収益の天井感」が見えやすくなってしまいます。
2. 市場期待とのギャップによる「失望売り」
カバーは上場後、急成長を遂げた反面、市場の期待値が非常に高く設定されていました。
しかし、2024年度以降の決算発表では、売上は伸びているものの、営業利益率が低下。
研究開発や海外展開への先行投資が利益を圧迫しており、「思ったほど儲かっていない」という印象を与えてしまいました。
つまり、業績の実態よりも“期待”が先に走りすぎていたのです。
この結果、「材料出尽くし」と見た投資家による利益確定売りが進み、株価下落を招く形になりました。
3. コンテンツ事業特有の不安定さ
VTuberやIP事業は、トレンドやファン心理に大きく依存します。
他のコンテンツやプラットフォームが台頭すれば、ユーザーが一気に流れてしまうリスクがあります。
また、運営の一挙手一投足がSNSで拡散されやすく、炎上や誤解が企業価値を一時的に揺るがすこともあります。
この**「感情で動く市場」**は、安定した成長を描く上での難しさでもあります。
4. コンプライアンス・運営リスク
一部報道では、外部クリエイターへの報酬問題や制作委託の対応など、下請法関連の行政指摘を受けたとも言われています。
真偽や影響度は不明ですが、「クリエイターと共に成長する企業」というブランドイメージに傷がつくと、ファンやパートナー企業の信頼にも影響を与えかねません。
■ カバーが持つ本質的な強み
株価が低迷しているとはいえ、カバーは依然として強力な資産を持っています。
それを整理すると、以下の3点に集約されます。
- ホロライブという圧倒的ブランド力
世界中にファンを持つVTuberブランドであり、登録者数は累計数億人規模。
そのブランドは、単なる“タレント集団”を超えたコンテンツIPへと成長しています。 - 多様な収益源
配信スーパーチャット、グッズ販売、ライブイベント、ライセンス提供、カードゲームなど、複数の収益モデルを持っています。
特に2025年以降は、「ホロライブ公式カードゲーム(TCG)」が好調で、収益の柱として注目されています。 - グローバル展開の余地
北米やアジア地域では、日本以上にVTuber文化が浸透しており、現地向けプロモーションの拡大余地があります。
海外ファンが日本語コンテンツを楽しむ流れも強まっており、言語の壁を超えたIP展開が可能です。
■ 株価回復に向けた再建シナリオ
では、今後カバーはどのように再び成長軌道に乗せられるのでしょうか。
ここでは、考えられる再建シナリオを3つの方向性で整理します。
シナリオ①:タレントリテンション強化型
主力タレントの卒業を防ぎ、安定したコンテンツ供給を維持する戦略です。
具体的には、報酬体系や契約内容の見直し、長期的なインセンティブ制度(株式報酬など)の導入が考えられます。
また、タレントの多様な活動(音楽・声優・イベント出演など)を支援し、会社への信頼を高めることも重要です。
ファンとの関係性を深めるために、会員制プログラムや限定イベントなども有効です。
コミュニティの熱量を維持できれば、株価も中長期的に安定していくでしょう。
シナリオ②:高利益型事業シフト型
タレント依存度を下げ、マーチャンダイジング・ライセンス・TCGなど利益率の高い事業に注力する戦略です。
すでに好調なカードゲーム事業を拡大し、他ジャンルとのコラボや海外展開を強化すれば、キャッシュフローを安定させることが可能です。
また、受注生産方式の導入や物流体制の効率化により、在庫リスクを軽減。
ライセンス収益やB2Bコラボを拡大すれば、「ファンに依存しすぎない安定経営」に近づくことができます。
シナリオ③:グローバルIP拡張型
海外ファンを積極的に取り込み、グローバル市場でIPを拡大する戦略です。
北米や東南アジアを中心に多言語配信を強化し、現地イベントやコラボ商品を展開する。
アニメ化・ゲーム化など、IPを横展開していくことで、**「ホロライブ=世界ブランド」**という認知をさらに高めることができます。
これにより、海外売上比率を高めるだけでなく、為替効果も取り込める可能性があります。
■ 実現に向けた課題と優先順位
これら3つのシナリオは、どれも一長一短です。
実現には時間とコストがかかり、優先順位の見極めが重要になります。
短期的に株価回復につながりやすいのは、「高利益型事業シフト」と「タレント維持施策」の2つです。
これらはキャッシュフローに直結しやすく、投資家心理を安定させる効果があります。
一方、「グローバル展開」は中長期の成長戦略として有望ですが、文化適応や現地法規対応などハードルが高く、慎重な進め方が求められます。
■ まとめ:ファンの信頼と収益構造の再構築が鍵
カバー株式会社の株価低迷は、一時的なものにすぎないかもしれません。
確かに短期的には離脱や失望売りなどの逆風がありますが、ホロライブというブランドの力は依然として圧倒的です。
今後は「タレントとの共創」「ファンとの信頼」「IPの多角展開」という3つの軸で、もう一段階上の成長フェーズに入ることが期待されます。
つまり、**“人と物とIPが織りなす新しいエンタメ経済圏”**をどう再設計するかが、再建の鍵になるでしょう。
■ おわりに:私自身の投資スタンス
この記事を書きながら、あらためてカバーという会社の潜在力を感じました。
確かに今の株価は低迷していますが、企業価値の本質は短期の値動きでは測れません。
ブランド力、IP展開力、そしてグローバルファンの熱量を考えれば、まだまだ可能性はあると思います。
私自身も、こうした長期的な視点からカバー株を買ってみたいと考えています。
ただし、もちろん投資は自己責任です。
VTuber業界は変化が早く、業績や人気動向によって株価が大きく動く可能性があります。
投資を検討する際は、最新のIR情報や業績を必ず確認し、自分自身の判断で行うことを強くお勧めします。
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