「下がる」と言われた日、日経平均はなぜ崩れなかったのか

資産形成

——不安を織り込んだ市場の強さと、私がソフトバンク株を少し買った理由

2025年10月14日、東京株式市場は朝から「大幅下落の可能性」が盛んに報じられていました。
円安の進行、政治の不透明感、海外市場の軟調——どれを取ってもネガティブな要素が並び、週明けは荒れた展開になるとの見方が大勢を占めていました。

しかし、実際の市場は想像以上に冷静でした。
日経平均は朝方こそやや売られたものの、その後はじわじわと買い戻しが入り、終値はほぼ前週末比で横ばい。
「下がる」と言われた日、株価は下がらなかったのです。

なぜ、これほどの悲観ムードの中で相場が崩れなかったのでしょうか。
その理由を、いくつかの角度から考えてみます。


■ 1. 悪材料の「織り込み済み」感が強かった

まず最大の要因は、市場がすでに悪材料を織り込んでいたことです。
為替が150円台後半まで進んでいること、米国の長期金利が高止まりしていること、そして日本国内で政治的不透明感が続いていること。
これらはすでに何度も報じられてきたニュースであり、投資家にとって“目新しさ”がありません。

マーケットは「サプライズ」に最も敏感に反応します。
逆に、すでに分かりきった悪材料に対しては動きが鈍くなるものです。
つまり、今回の「大幅下落予想」は、報道ベースでは“出尽くし”だったとも言えます。


■ 2. 米国株の底堅さが支えた

もう一つの要因は、米国市場の底堅い動きです。
前週末のニューヨーク市場では、ナスダックやS&P500が下げ渋り、特に半導体関連株に買い戻しが入りました。
エヌビディアやAMDといったAI関連企業の好調さが再び注目を集め、「ハイテクはまだ終わっていない」という見方が台頭していました。

この流れを受けて、日本でも半導体や電子部品株に買いが戻りました。
特に東京エレクトロン、アドバンテスト、ソシオネクストといった主力銘柄が強含んだことで、日経平均を下支えしました。


■ 3. 円安メリット株への資金シフト

為替が1ドル=150円後半まで円安方向に進行していることも、輸出関連株への追い風になりました。
自動車や機械、電機メーカーなどは円安が利益を押し上げる構造にあり、トヨタやホンダなども堅調。

円安は生活者にとっては物価高の要因となりますが、上場企業にとっては収益増加要素となるため、「日本株全体が売られにくくなる」作用を持ちます。
為替要因が悪材料としてではなく、むしろ一部セクターではプラスに転じたことが、今日の相場を支えた一因でしょう。


■ 4. 機関投資家の「押し目買い」

市場関係者の間では、機関投資家の買い支えも指摘されています。
「下げそうだ」という観測が広がると、逆にそれを狙って買いを入れる投資家も増えます。
特に海外勢や年金基金などは、調整局面を中長期的な買い場とみる傾向があり、朝方に下げた場面ではそうした資金が動いた可能性があります。

加えて、先物市場では一時的な売り仕掛けのあとにショートカバー(売り方の買い戻し)が入り、午後にかけて指数を押し上げました。
一見静かな相場の裏で、こうした大口の動きが日経平均を下支えしていたようです。


■ 5. 決算シーズン前の様子見ムード

10月下旬からは国内企業の決算発表が本格化します。
その前にポジションを大きく動かす投資家は少なく、売りも買いも手控え気味。
「いったん様子を見よう」という姿勢が広がり、結果的に大きな下落を防ぐ形となりました。

特に今期は、円安による輸出企業の上方修正期待が高く、悪材料が出にくいとの見方もあります。
こうした“決算待ちの静けさ”も、今日の相場を安定させた理由の一つでしょう。


■ 6. 個人投資家の冷静な対応

SNSや投資コミュニティを見ても、個人投資家の間では「一度下げたら買い増そう」という声が目立ちました。
過去に何度も「下落予想→反発」という展開を経験してきたことで、投資家心理が以前よりも落ち着いている印象です。

投資系YouTubeやX(旧Twitter)では「こういう時こそチャンス」という投稿が相次ぎ、実際に下げ幅が限定された要因の一部になったと見る人もいます。
短期筋だけでなく、長期ホルダーの“買い支え意識”が高まっていたと言えるでしょう。


■ 7. 海外マクロ要因が想定内だった

海外でも、注目されていた米国CPI(消費者物価指数)や雇用統計が、市場予想の範囲内に収まりました。
「次の利上げはない」という見方が定着し、米国金利が急騰するリスクが薄れたことも、安心感につながりました。

また、地政学リスクも一時期に比べて沈静化傾向にあり、リスクオフムードがやや和らいでいます。
海外投資家が日本株を売り急ぐ理由が乏しかったことも、下げを防ぐ要因となりました。


■ 8. AI・半導体関連の強気シナリオが継続

日経平均の構成銘柄の中では、依然としてAI・半導体関連株が大きな存在感を持っています。
生成AIやクラウド、ロボティクスなど、次世代技術への期待が高く、世界的な成長テーマとして根強い人気があります。

こうした“成長物語”を背景に、投資家がポジションを大きく手放しにくいという状況も続いています。
つまり、「悪材料があっても、売り切るほどではない」という心理が働いているわけです。


■ 私はその朝、ソフトバンク株を少し買った

そんななかで、私は朝方に少し下げた**ソフトバンクグループ(9984)**を買ってみました。
大きな理由があったわけではなく、「思ったより市場が落ち着いている」と感じた瞬間の判断です。

過去にも通信株のソフトバンク(9434)を持っていたことがあり、配当の安定感をよく知っていました。
グループとしてはAIや投資事業に波がありますが、孫正義氏が描く未来志向の戦略にはいつもワクワクさせられます。
この“未来への投資”という姿勢が、今回もう一度買ってみようと思えた理由の一つです。

もちろん短期の上昇を狙っているわけではなく、「下がらない市場の背景」を体感したうえでの小さな実践といったところです。


■ まとめ:悲観ムードの中に見えた日本市場の底力

今日の相場は、ニュースの見出しとは裏腹に、非常に落ち着いたものでした。
「大幅下落」と言われながらも実際には崩れず、むしろ押し目買いが機能した一日。

その背景には、

  • 悪材料の出尽くし
  • 米国市場の安定
  • 円安メリット
  • 決算前の様子見
  • 機関投資家と個人投資家の冷静な買い支え
    といった複数の要因が重なっていたことが分かります。

マーケットは、悲観が広がるほど逆に強くなることがあります。
不安が最大化したとき、実はそれが底である——そんな教訓を、今日の相場が改めて示してくれたように思います。

私はその教訓を胸に、これからも「ニュースよりも市場の反応を見る」姿勢を大切にしていきたいと思います。
そして、今日買った少しのソフトバンク株が、そんな心構えを象徴する“実験的な一株”になってくれれば嬉しいです。


※本記事は筆者の個人的な投資経験と相場観に基づいた内容であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。

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